· 

セミナー参加レポ | 生成AI×システム開発

広島で考える、生成AIが便利を広げる 現場の声とこれから。

2025年9月12日、HiBiS DX・ITトレンド研究部会主催するセミナー、「広島における生成AIを使ったシステム開発最前線」 を開催しました。当日は、下記3名を登壇者に迎え、現場でのAI活用の「リアル」 を共有いただきました。

  • 大手SIerでAI導入を進めるエンジニア
  • 広島の企業のCTO
  • 医療系ベンチャーの代表

参加者の熱気

最初の定員は30名でしたが、申込が相次ぎ、増員を重ねて最終的に40名を超える参加者に。

広島でも生成AIへの関心が急速に高まっていることを実感するセミナーとなりました。

個人的に

今回、運営の一員として携わりつつ、個人としても学びが多い時間でした。

特に私は医療法人で理事を務めていることもあり、医学生ベンチャーが挑む医療AI開発の話に強く関心を持ちました。

現場の制約を前提にどう工夫するか」という実践的な話は、医療に限らず多くの分野に通じるテーマだと感じました。

セミナー概要

生成AIの急速な進化に伴い、教育・医療・開発現場でどのようにAIを活用し、どのような課題に直面しているのかをテーマに開催。三者三様の現場視点から、AI活用の実態・導入の壁・人間の役割が語られ、「AI時代に求められるエンジニア像」が見えてくる示唆に富んだ内容。


セッションサマリー

セッション1

SIerの現場から

ディレクトリ構成と設定ファイルから考える、SIerのVibe Coding

兼安聡 氏:株式会社サーバーワークス
2025 Japan AWS Top Engineers (AI/ML Data Engineer) DevOpsエンジニア


テーマ:生成AIとの協業による開発手法と生産性向上

生成AIと協働する「バイトコーティング手法」で生産性が1.25〜1.5倍向上

「AIに任せる」だけではなく、人が意味を理解して確認することの重要性を強調


  • 「バイトコーティング」というAIとの対話型開発手法を導入
  • Amazon連携による「固体ロットエージェント」の運用を推進
  • スクラム開発チームでの活用により、生産性が1.25~1.5倍に向上
  • 若手開発者の「AIが書いたコードは不安」という声
    • 「コードの意味を理解する習慣」が不安解消につながる
  • 実践上の工夫
    • 使用言語・バージョンの明示
    • ドキュメントテンプレートの整備
    • 自動チェックの導入など

セッション2

企業におけるAI活用の実践

ビーライズでのAIコーディング活用

林健司 氏:株式会社ビーライズ XR開発部CTO
XR、AI、デジタルツインの融合をテーマに研究・開発


テーマ:GitHub Copilot×ChatGPTによるプロジェクト効率化

GitHub CopilotとChatGPTの併用により、設計やコードレビュー、要件整理を効率化

既存のプロセスやテンプレートにAIを組み込むことで、リスクを抑えながら効率を最大化


  • AIツールの併用(ChatGPT+Copilot)が非常に有効であることを、複数の開発プロジェクトで実証
  • 過去のドキュメントやコード資産のテンプレート化・再活用により、初期構想や情報整理の効率が大幅に向上
  • 新規案件の要件定義段階でも、AIの対話を活かすことで方向性の可視化と設計検討がスムーズに
  • 成果を左右するのはツール選定そのものよりも、バージョン管理や社内の運用ルールの整備
  • バージョン管理・社内運用のしやすさを重視したツール選定の考え方を共有

セッション3

医療分野の挑戦

学生ベンチャーの挑戦:限られたリソースでAIを武器にしたPoC開発

山田和輝 氏:株式会社Watous 代表取締役
広島大学医学部医学科6年。株式会社watousではFlutter、Unity、Pythonを用いてPoC開発


テーマ:医療分野におけるAI活用の実情とローカルAI戦略

医療データを扱うPOC開発では、クラウドAIよりローカルAIが現実的

匿名加工やダミーデータ生成などを組み合わせて、安全かつ実用的な仕組みを実証


  • 看護師によるデータから医療サマリーを生成するシステムのPOC事例を紹介
  • 医療分野特有の課題(個人情報保護/頻繁な仕様変更/専門職が多い)
    →クラウドAIより「ローカルAI+従来ツールの組み合わせ」が有効との見解
  • 匿名加工、ダミーデータ生成などを取り入れた開発体制
  • 「どこにAIを使うか」「AIに任せすぎない」設計思想が不可欠である
  • 「AI時代にエンジニアとして成長するには?」
    →プロンプト設計や設計図の読解力、判断力といった“上流工程の力”が今後ますます重要になる

AIは道具。“考える力”が主役になる

  • ✅ AIを「使いこなす」には、背景知識と設計力が不可欠
  • ✅ 判断を任せず、自ら意味を理解する姿勢が問われる
  • ✅ ツールは万能ではなく、組み合わせと活かし方が鍵

登壇者全員が共通して、「AIがあるからこそ、エンジニアは今まで以上に“考え、学ぶ”力が求められる」

と語っていたと思います。生成AIは便利なツールである一方、「設計」「文脈理解」「判断」など人間にしかできない工程の重要性がむしろ高まっている。「とりあえずAIに任せる」ではなく、AIをどう活かすかを設計できる人材が活躍する時代にシフトしつつあることが、現場の実感としてある。
「AIが便利になればなるほど、人間が学び続ける重要性が増す」という逆説的な現実です。
個人的にはジンドゥーが世の中出てきて勉強会で登壇した時にエンジニアなどから「では僕たちの仕事は無くなるのか?」という疑問をよくもらいましたが、その時の感覚にすごく似ている答えがここにある気がします。

どう設計し、人がどう関わるのか。

AIによって開発が効率化される一方で、「判断する力」や「設計する力」が以前にも増して重要、必要になってきている。

「AIを導入するだけでは成果は出ない。どう設計し、人がどう関わるかが大切」

という共通メッセージがふんだんに含まれているセミナーでした。

  • プロンプトをどう設計するか?
  • 出力されたコードをどう読み解くか?
  • チームとしてどう活かすか?

これらを考えられる人こそが、AIとともに価値を生み出せる存在になるのではないでしょうか。

生成AIがもたらす変化は、ツールの進化だけではなく、「人の学び方」そのものに変化を促しているのかもしれないと改めて思いました。

追いかける、の先を。

生成AIの進化は目覚ましく、情報や技術が次々にアップデートされます。
でも、ただ追いかけるだけではなく、どう使うかを自分で考え、試し、共有することがこれからの鍵だと思っています。

「もっと便利に使える世界を広げる」は、一人ではできないこと。こういったセミナーを通じて、一緒に考え、実践する仲間が増えることを願っています。

広島という地域で、AI活用の「生の声」に触れられたことは大きな収穫です。

これからも部会活動を通じて、AIやデジタルの最前線を広く届けていくことに関われたらと考えています。

参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

次回も 生成AI !次回はライトニングトークです!

今後もHiBiS DX・ITトレンド研究部会では、部長武村さんと副部長藤本さん中心に、最新のテーマを取り上げたセミナーを企画しています。次回開催は 10月18日。次回も生成AIです!

生成AI -LT 広島 vol.1

  • 日時:2025年10月18日(土)16:00〜17:45
  • 会場:イノベーションハブひろしまCamps
  • 内容:複数のライトニングトーク(LT)形式で、「生成AIを試してみた」「プロンプトの工夫」「簡易アプリ発表」などを共有予定
  • 参加費:無料
  • 参加申込:https://hibis.connpass.com/event/362881/

このLT形式は、短時間で多くの実践例を聞けるので、「最近のAIのトレンドを手軽にキャッチアップしたい」「自分も試してみたけど人前で話すのは今まで躊躇していた」という方にもおすすめです。
登壇希望枠もあり、初心者・経験者問わず参加可能です。ぜひご参加ください!